世界最速レベルのブルワーと走って食べて飲む
世界最速レベルのブルワーと走って食べて飲む
~GOOSE ISLANDのブルワー ティモシー・フェイス氏が来日~
1998年、シカゴで生まれたGOOSE ISLAND。そう古い歴史ではないが、地元シカゴはもとより国内のエアラインに搭載されるなど、アメリカ国内では馴染みのあるクラフトビアメーカーである。数々のビアコンペでも多数入賞するなど、日本のビアギークの間でも知られていて、その上陸が待たれていた。
そして満を辞して3年前、世界No.1ビール企業のアンハイザー・ブッシュ・インベヴ社の傘下になったことで、念願の上陸を果たした。
さて、そのGOOSE ISLANDからブルワー、ティモシー・フェイス氏(以下、ティモシー。敬称略)が来日した。来日中は都内のビール処で様々な’Meet the Brewer'イヴェントが行われたが、この日、5月16日はこのビール界きっての俊足ランナー(シカゴマラソンでは2時間45分のタイムを持つ)と一緒に皇居を走ろうという企画。自称ランナーの私ももちろん参加してきた。
走り出したら、やっぱり速い!ビール業界ではデンマークのミッケラー総裁のミッケル・ボルグ氏も俊足ランナーとして知られているが(光栄なことにミッケルとも何度か走らせてもらったことがある)、走りながら「うーん、この二人どっちが速いんだろう?でもティモシーの方がちょっと若そうだな」などと妄想しながらキロ4分半の彼について行ったが、1周(5km)で私はOUT、彼らは軽やかにもう1周の旅に出た。夜の皇居は暑くもなく寒くもなく、適度な風も吹いてとても気持ちのいいRUNであった。
RUN前のくつろいだひととき。今日本はいちばん気持ちのいい季節 RUNが終わってシャワーで汗を洗い流した後のお待ちかねのビールは皇居からも近いビストロ「ランプラント」で。
この日、公募で当選した一般のコンシューマーとメディアが一緒になってビストロのテラスはまぁ賑やか。
お店自慢の肉料理の数々と312 Urban Wheat AleとGoose IPAをドラフトで楽しんだ。
ランナーからブルワーの顔になったティモシー
お店オススメのペアリング(1)
312 Urban Wheat Ale×特製牛スジ・トリッパetcの塩モツ煮込み
お店オススメのペアリング(2)
Goose IPA×ベーコンチーズポテトパイ
俊足ブルワーティモシーがGOOSE ISLANDに入ったのは5年前で、現在26人いるブルワーの中で彼は研究開発部門にいる。
モルトやホップなどの原料や樽など、常に新しいものを探しているという。
今回日本は初めての訪問で和食など美味しいものを楽しむ他に、日本独自の素材にも注目している。特に抹茶とゆずは発見だったようで、今後のGOOSE ISLANDのビールには必ず反映されるはずだ。あー楽しみ!
GOOSE ISLAND 公式HP
http://www.gooseisland.jp/肉ビストロ&クラフトビールランプラント
パタゴニアの「ロング・ルート・ウィット」
’カーンザ’という植物を使ったビールの第2弾商品。
同社は常に環境に配慮した製品を作り続け、スポーツウェアの綿素材にはオーガニックコットンを、食品にもすべてオーガニックの原料が使われている。
ムール貝までもオーガニック。塩分控えめながら旨味が凝縮されていて満足度が高い
さて、ビール名にある’ロング・ルート’、直訳まんまの’長い根っこ’という意味である。’カーンザ’という植物は小麦の一種でありながら多年生の穀物(普通の小麦は一年生)で、地下に長いものでは3.7mもの根を張るという。多くの炭素を大気中から取り込み土の中に封じ込める力がある。これにより、土壌内の生物が多様化し、土をより健康な状態に、さらには少ない水で育つという。
ビールにはこの根っこを使うわけではなく、地上の小麦の部分。このウィートにもペールエールにも15%のカーンザが使われている。もちろんオーガニックである。大麦麦芽、オーガニックの小麦とホップにコリアンダーとオレンジピールを加えたベルジャンタイプのウィートだ。
あらためてテイスティング。
色は薄いオレンジ色。少し濁っているので無濾過と思われる。注ぎ方か、グラスの違いか、はたまたケグと缶の違いか、泡はそれほどなかった(お披露目の時にはもう少しあった)。
香りは極めて柑橘系とホワイトペッパーのようなスパイス。
味わいはかなりはっきりした酸味が続く中で、アーシー(土のニュアンス)というか根っこの風味が感じられる。根っこは使われていないのにへぇ、と思う。
欧米では根っこを食べるということは古くから’ありえない’、ともすれば屈辱とすら思われてきたと言われるが、日本での根っこの代表的なものとして「ごぼう」は普通に食されてきたので、抵抗がないどころかちょっと懐かしさすら感じられる。
まぁそこまで舌を研ぎ澄ます必要はない。ビールは’旨い’’楽しい’’と思って飲めばいいだけのお酒。でももし傍らに’きんぴらごぼう’があったとしたら”ラッキー!”と思うに違いないビールなのである。
ロング・ルート・ウィット
缶 355ml¥440(税別)
養命酒が手がけるクラフトジン~香の森~
「飲んだことないけど養命酒は知っている」人も多いだろう。
おなじみのものでは丁子や桂皮(シナモン)、ウコンなどの生薬を使った養命酒は肉体疲労、冷え性、胃腸虚弱などの薬効成分入りリキュールとして長年’大人の日本人’に愛飲されている。我が家にも幼少の頃からサイドボードの傍らにあった。
「リキュール」カテゴリーとして販売されていた養命酒だが、2014年の薬機法(正式には医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律。旧薬事法)が改正になり、以降、効能を謳える「(第2類)医薬品」カテゴリーとして販売することを決めた。(従来通り「リキュール」カテゴリーでの販売だと効能は謳えない)。これまでスーパーや酒販店でも扱えた販路は薬局、ドラッグストアに限られ飲食店でも提供できなくなった。
そんな背景も少なからずあったとは思うが、折しもタイミングは’クラフト’ブーム。ビールからスピリッツにまで波及した。
ことジンに関しては’ボタニカル’というキーワードがあり、要は様々な植物を原料に
複雑な香り・味わいを追求する動きが世界中に蔓延している。
生薬とは言い換えると究極の’東洋のボタニカル”であり、同社の得意中の得意、オハコである。満を辞して(?)本領発揮というわけだ。
さて、発売された「香の森」の核となるボタニカルは’クロモジ(黒文字)’。昔から高級枝楊枝に使われている植物である。そのままでは香らないがパキッと折ると爽やかな清涼感、グリーンのニュアンスが感じられる。「香の森」にはこのクロモジの太枝、細枝、葉が使われている。その他、ジンの主原料ジュニパーベリー始め花椒、生姜、クコの実などの東洋系ハーブに加え、セージやレモンピールなど全19種類のハーブで構成されている。
手前の枝がクロモジ(細枝)
ヨーロッパのクラフトジンにはバラなどの花系や野菜を入れているものも多く、その場合はやはり華やかな’フラワリー’と表現される香り、野菜の場合は色で言うと’青い’みずみずしい香りがするのだが、このジンはどちらかというと森で深呼吸しているような’深緑’の香りが満載。飲んだ印象は口に入れた瞬間思いの外パンチが強くびっくりしたが、次第に森の癒しを感じられるようになる。
少し加水するかジントニックにするとよりスムーズに飲めるのでオススメだ。
アルコール度数:47% 容量:700ml \4,590(税込)
サクラアワード2019 審査会
サクラアワード2019 審査会
女性ジャッジによるワインのコンペティション「サクラアワード」(一般社団法人ワインアンドスピリッツ文化協会主催)の審査会が1月29日、30日、ホテル雅叙園東京(東京・目黒)で開かれ、昨年に引き続き審査員として参加してきた。
6回目となる今年は13カ国から4326アイテムのワインが出品され、延べ560名(各日280名、うち私を含む30人ほどが両日)の女性審査員が審査にあたった。
会の冒頭で、審査責任者の田辺由美氏は会の目的①日本人のワイン年間消費量5L②(ワインを通しての)日本の食文化を探す③女性が輝ける場所を探すを掲げた。
(①は毎年下がってはいないが足踏みが続いている②旨味や出汁文化を知っている日本女性による目線でワインとのマリアージュを提案③言わずもがな)
なおかつ「今回も世界のヴィニュロンたちが丹精込めて造ってきたワインが並んでいる。責任ある、かつメリハリのある(いいものはいい、ダメなものはダメ)審査を!と結んだ。
’サクラ’のいでたちでの田辺由美さん
さて審査、である。各日とも基本は一人3フライト(1フライト13~14アイテムを基本1時間で審査)。ルールは例年通り。5人一組になり(うち一人はグループリーダー)各自がアイテム毎に外観、香り、味わいなどが各配点数と共に記載された審査用紙に記入、合計点を出してグループリーダーに提出する。その平均点で賞(ダブルゴールド、ゴールド、シルバー、もしくは該当なし)を決定する。
私1日目:スパークリングワイン14(アイテム)、赤スティル12、赤スティル13、甘口4
合計43アイテム(私のグループは1フライト多かった)
2日目:スパークリングワイン11、白スティル14、赤スティル12
合計37アイテム
昨年は各日4フライトで各フライトの試飲アイテムが少なかったのだが、今年はフライトが1つ減った分アイテムが増えた。疲労度は同じだ。
回を重ねるごとにエントリーされるワインのヴァリエーションが増え、今年の第一(主要)ぶどう品種は300を数えた。事前に知らせられていたゆえ、知らない品種を一通り調べてみたが、それでもわからない品種がたくさんあった(近年話題のギリシャやジョージアなどの土着品種は試飲会などで確認してはいたが、そのほかの、特に東欧地域の品種は未だ情報不足)。幸い両日とも私にとっては馴染みのある品種で助かったが。
スパークリングワインは泡立ちも重要なので、注がれたらすぐに見極めなければ
今回2日目はグループリーダーという大役を仰せつかり、昨年、今回初日とその仕事ぶりは見ていたのだが、いやぁ見るのとやるのは大違い。メンバーと同じようにテイスティングして点数をつけるほかに、メンバーの点数をすり合わせて賞の決定をしなければいけない。単純にグラスを持つ手とペンを持つ手の他に電卓叩く手とホッチキスとめる手が加わる。何より、ルールはわかっているつもりなのにそのプレッシャーと時間に追われ、冷静さに欠く自分がいた。
「今なら出来るのにー」と思うことがあの場でできていたかどうか、、、
反省しきりである(泣)。
開場前の静けさとワイン以外のアイテム
ともあれ審査はこうして終わり、今頃集計真っ只中だろう。
毎年前年後半ごろから準備が始まり、我々審査員たちには年内にすべての情報がメールや郵送で送られてくる。当日はすべてがスムーズで、本当に気持ちよく審査に集中できる(2日目のグループリーダーのとっちらかりはすべて自分のせい)。
どれだけ周到な準備をしてきたかを想像するだけで頭が下がる。
田辺由美さんはじめ、田辺智代さん、木下さん、境先生、サーヴに当たってくださった40名のソムリエ、、、敬意を表します。
各賞ははバレンタインデー(2/14)にサクラアワードHPにて発表される。
何より自分がいちばん楽しみ~
なお、ワイン業界の著名誌「ワインスペクテーター」のwebにての田辺由美さんへのインタビューが掲載されている。
サクラアワードのこと、生まれ育った環境のこと、ワインスクールのことなど興味深い記事なのでぜひ!
メルシャン、既存ブランドに注力+αはシードル?
メルシャン2019事業方針 既存ブランドに注力+α
(3月15日発売のメルシャンシードルを持つ代野社長)
世界のワイン生産量はここ2年減少傾向がある一方で、消費量は僅かながら上昇している。トータル的にはほぼ横ばい状態。そんな中同社はは既存の5大ブランド(おいしい酸化防止剤無添加ワイン、フロンテラ、カッシェル・デル・ディアブロ、ロバート・モンダヴィ、シャトー・メルシャン)に注力する。
これは9日に開かれたキリンの事業計画の「新商品投入ではなく現在好調な商品をさらなる売り上げアップを狙う」戦略と合致している。
「フロンテラ」はチリの大手ブランドで同社のデイリーワイン的位置付け(希望小売価格が\1000以下)。現在は売り上げ前年比20%と好調だが、これからEUに対するEPAの発効でこれまでとはいかないだろうことは容易に想像できるし、「これからチリワインは淘汰されて行く時代になるだろう」と代野社長も言っていたので、さらなる戦略が必要になると思う。
「カッシェル・デル・ディアブロ」はフロンテラと同じくチリワインだが、ワンランク上の中価格帯ワイン(\1500以下)の主力商品。そういえば、どの鉄道かは忘れたが、全車両の広告がこの商品で占拠されていたなぁ。
日本ワイン「シャトー・メルシャン」については個人的には思い入れのあるブランドなので少々長めに。
1877年、民間発として勝沼に誕生したワイナリーに昨年9月には長野県に「桔梗ヶ原ワイナリー」がオープン、今年秋には同じく長野県に「椀子ワイナリー」が稼働する予定だ。これによりさらなる地域活性化と何より生産能力が格段に上がる。ということはブドウの栽培地をさらに拡大させる必然にかられる。
桔梗ヶ原ワイナリー初仕込み(2018年10月4日)
椀子ヴィンヤード建設予定地(2018年10月25日起工式)
現在同社の自社畑は山梨、長野を中心(ほか福島、秋田)に50haを所有するが、今後2027年までに76haにまで拡大する予定だそうだ。
昨今の日本ワインの盛り上がりもあり、北海道など再開拓される地域もあるが、当面はお膝元の山梨・長野エリアでの拡大を考えている。
戦略的には言わずもがな、今後においてもさらなる国内のシェア拡大と来年のオリンピックが好機になるか?インバウンド効果。その逆での海外輸出。
これまで同社は数々の海外ワインコンクールでその名を業界にじわじわと知らしめてきたが、ことビジネスという意味では海外的にはそこまで積極的だったとは思えない。昨年大橋MW(大橋健一マスター・オブ・ワイン)をブランドコンサルタントに迎えることによって、海外市場への参入を積極的に考えるようになったといい、手始めに昨年末、香港でのプロモーションを開始した。今後はロンドン、NYでの展開も考えているという。
もう一つ、個人的に注目しているアイテムとして「シードル」がある。
リンゴから造られるこの醸造酒は平たくいうと’飲みやす’女性にも受ける’お酒の入り口として最適なアルコールだと思っている。
偶然か必然か、このお酒はビールの切り口として「サイダー」、ワインの切り口として「シードル」という名で今業界(世界的にも)をじわじわと攻め始めている。造り方はどちらもほぼ同じ、リンゴを絞って酵母(時にはリンゴについた自然酵母だけ)で発酵させたお酒。イギリスのパブではビールのタップの傍に必ず1つは繋がっているポピュラーな飲み物だ。
同グループで最初に目をつけたのがキリンのハードシードル(本来のリンゴの甘さを切ったドライなシードル)。一番搾りなどの主力商品と同様、飲食店にタップで提供するほか、290mlのボトルでも販売している。こちらはビールサイドからのアプローチで、アルコール全体としての入り口(主に若年層全体)。
一方この3月5日発売のメルシャンのシードル(希望小売価格\560/500ml瓶)は’酸化防止剤無添加’シリーズの一環、5%という低アルコールなど、アルコール初心者のみならず健康志向の老若男女(特に若い女性層、この世代には’苦いの苦手’な女子多し)、加えてワインバリア(とかく敷居が高いと思われがちな)の低減を狙うという。
ワイン寄り、ビール寄り、アプローチの仕方の違いはあれど、同じリンゴの醸造酒で歩み寄っているのは面白い。実際、(クラフト)ビール好きが(なぜか自然派)ワインに飛び火(移行ではない)しているパターンは今や’流行’とさえ私は思っている。
この際ワインだビールだの垣根を今取っ払う時がきてるんじゃ?
2019年キリンビール事業方針
キリンが展開するクラフトビールサーバー「タップマルシェ」
キリン布施孝之社長(すいません、目ぇつぶちゃってました)
今年の取り組み方針は
①主力ブランドへの集中投資
②クラフトビール事業への注力
の2本柱
①について
主力ブランドのリニューアル
*一番搾り(ビール・4月中旬~)
*本麒麟(新ジャンル・1月中旬~)
のほか、売り上げが堅調な「のどごし生(新ジャンル)」のコミュニケーション強化
②について
タップマルシェの拡大
2018年までに7000の飲食店で展開しているタップマルシェを13000店に拡大させる目標。現在8ブランド(スプリング・バレー・ブルワリー、GRAND KIRIN、ヤッホーブルーイング、常陸野ネスト、伊勢角屋麦酒、FAR YEAST、ひでじビール)が参戦しているが、今後も増やしていきたい意向。
ヤッホーブルーイングの提携(2014年~)のような資本絡みの提携の予定はない。
⭐2018年、2019年(目標)の前年比比較(%)
2018 2019
ビール累計 +5,2% +2%
ビール -5,9% ±0%
発泡酒 -7,5% -0,3%
新ジャンル +28,7% +5,3%
RTD(主に缶チューハイ)+13,2% +8,5%
ノンアルコール飲料計 -6,1% ±0%
おわかりの通り、ビール累計とはビール以下の全てを総合した数字のこと。
RTD、ノンアル飲料を除くと2018年はのどごし生や本麒麟などの新ジャンルの売り上げによるところが大きい。今年の目標数字を見ると、ビールは±0ながら、新ジャンルの+が少なくなっていることから、一番搾りを主力とする「ビール」をかなり売らなければならないことになる。2018年の一番搾りの缶の売り上げは前年比
105%と好調だが、樽生や瓶といった飲食店向けの強化が今年の課題になってくると思う。昨年の酒税法改正でビールと発泡酒の税率を2026年までに段階的に改正して、最終的には双方\155/リットル(現在はビール\220、発泡酒約\178)になるが、その前に今年10月の消費税増税が立ちはだかる。
大手のみならず、日本のビール業界にとって今年は正念場になるかもしれない。
ボージョレ・ヌーボー2018「しっかりとして味わい深く、同時になめらかで複雑」
ボージョレ・ヌーボー2018
「しっかりとして味わい深く、同時になめらかで複雑」
収穫が終わるとすぐに、ボジョレでは北から南へ、そしてカーヴからカーヴへ、
熱狂と称賛の声が駆け巡りました。2018ヴンテージは2017年、2015年、2009年と並び、珠玉のヴィンテージとして歴史に刻まれるでしょう。
by ボジョレワイン委員会