イスラエルワイン「ジュディアンヒルズ・カルテット」セミナー

イスラエルワインセミナー

 ワインレポート主催のイスラエルワインセミナーが12月5日、Jプレゼンスアカデミー東京青山教室で開催された。

 四国より少し大きく九州よりは小さいこの国には南北400kmに5つのワイン産地が点在していて、5000ヘクタールの畑におよそ300のワイナリーがワインを生産している。
今回はそのワイン産地の一つであるジュディアンヒルズから4つの生産者が登壇した。「ジュディアンヒルズ カルテット」と名付けられたこの団体は、ドメーヌ・デュ・カステル、ツォラ・ヴィンヤード、スフェラ・ワイナリー、フラムの4つで構成されており結成はまだ1年あまり。
セミナーはイスラエルでただ一人、ワイン資格の世界最高峰であるマスター・オブ・ワイン(以下MW)の称号を持つツォラ・ヴィンヤードのエラン・ピック氏をメイン・スピーカーに進められた。

 北半球のいちばん南、地中海の東端に位置するこの国のワイン産地は高原や山にある。ブドウの成長に有利な”寒暖の差がある”場所を求めたからだ。ジュディアンヒルズは標高500m~1000mの高原。地中海性気候で夏は暑くなりすぎず(7月~9月の平均気温は30~18度)、冬も寒くなりすぎない(雨は冬に600mm程度降る)。
土壌は石灰岩質の土壌、表土はブドウを栽培する上では大事な要素の一つである”水はけの良さ”を備えた「テラ・ロッサ」と呼ばれる赤い粘土質土壌である。
これらに目をつけ、この地は25年前からハイクオリティワインを目指して本格的にワイン造りを始めた。

 世界最古のワイン造りは6500年ほど前のコーカサス地方ジョージア)と言われているが、その後はイスラエルを渡ってヨーロッパに普及していく。起源7世紀初頭まではイスラエルでも盛んにワインづくりが行われていたというが、その後のイスラム帝国下の支配により1250年もの間途絶えてしまっていた。1880年代になってようやくボルドーの名門であるシャトー・ラフィットのエドモンド・ロートシルトがこの国のワイン業界再建の手助けを担ったのである。そのためか土着品種がなく(少なくとも今回のテイスティングには登場していない)、テイスティングは白も赤も国際品種ばかり、特に赤はボルドーブレンドが多く見られた。

テイスティングアイテムは以下の通り

*FRAM BLANC 2016
 Chardonnay/SauvignonBlanc
*SPHERA WHITE CONSEPT CHARDONNAY 2016
Chardonnay
*TZORA VINEYARD SHORESH BLANC 2016
SauvignonBlanc
*SPHERA RIESLING 2016
Riesling
*SPHERA WHITE SIGNATURE 2016
Semillon/Chardonnay
*"C"BLANC DU CASTEL 2016
Chardonnay

*FRAM CLASSICO 2014
CabernetSauvignon/PetitVerdot/CabernetFranc/Syrah
*PETIT CASTEL
CabernetSauvignon/merlot/Petitverdot
*TZORA VINEYARD SHORESH RED 2014
CabernetSauvignon/Syrah/PetitVerdot
*FRAM MERLOT RESERVE 2015
Merlot/CabernetSauvignon/PetitVerdot
*CASTEL DRAND VIN 2015
CabernetSauvignon/Merlot/PetitVerdot
*TZORA VINEYARDS MISTY HILLS 2014
CabernetSauvignon/Syrah

 イスラエルワイン自体飲んだ経験が浅く、しかも赤白共に国際品種であることも手伝って、ジュディアンヒルズワインの特徴をつかむことは私には難しかった。人によってはアメリカのナパヴァレー、スペインのトロやリベラ・デル・ドゥエロのよう、などと表現する人もいた。
いずれにしてもクオリティーはとても高く、土地の力量、技術と知識の向上、資本が短期間に凝縮されているなぁと感じる。気候変動などによるヴィンテージのブレが少ないのも魅力のひとつ。
が、価格も安くはないだろうと思ってはいたが想像以上だった。今回テイスティングしたワインは日本での上代は¥5000を超える。高いものは¥10000である。白ワインしか造らないSPHERAはまだ未輸入であるが、それでも¥7000~8000になるだろうという。
マイクロワイナリーであること、クオリティー向上への投資など要因は理解できるが
イスラエルワイン普及”の足かせとなっているのではないかと少し懸念している。
それに加えユダヤ教の国ゆえの律法、コーシャという規定があり食品など厳しく制限されている。神聖なるブドウから造られたワインもそのひとつであり醸造の規制も厳しいが、その宗教性も乗り越えたハイクオリティーなワインを造るという意気込みの高さがどこまで響くのか?今後が楽しみである。
(2017年12月5日 取材)
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写真上の中央がイスラエルの唯一MW保持者エラン・ピック氏。日本の大橋健一MWとは同期、当日は大橋氏もゲストで登壇した