マルケージ・ディ・グレージ メーカーズディナー

由緒正しき異端児が造るバルバレスコマルケージ ディ グレージ」
 
 大榮産業㈱が2016年より取り扱いを始めたイタリア、ピエモンテ州のワイナリー「テヌーテ・チーザ・デアジナーリ・デイ・マルケージ・ディ・グレージ(以下マルケージ・ディ・グレージ)」のエクスポートマネージャー、アレッサンドロ ・ディ・グレージ氏の来日にあたり、10月2日、東京・神楽坂のワイン割烹「宙山」にてメーカーズディナーが開かれた。
 ピエモンテ州トリノに12世紀から続く名門貴族を先祖に持ち、1650年からは優れたワインの産地「バルバレスコ村マルティネンガ」「トレイゾ村モンテ・アリバルト」「アレッサンドリア県ラ・セッラ」「カッシーネ村モンテ・コロンボ」の4エリアに畑を所有するようになり、長きに渡りブドウ造りを営んできたが、これらの畑で造られたブドウは名門ワイナリーのチェレットやプロドットーリ・ディ・バルバレスコに売っているだけで自らはワインを造ることはしていなかった。
 1973年、このエリアの畑のポテンシャルに気づいた現当主、アルベルト・ディ・グレージ(アレッサンドロの父)は、遅まきながらもここから自家醸造を始めることになる。とはいえ何事も通り一遍では気がすまないアルベルトのこと、伝統は重んじるもののなにか普通でないことを模索して、イタリアのワインの帝王とも称され旧知の仲でもあるアンジェロ・ガイヤ氏や、安価なローカルブドウであるバルベーラ種を高級品種に仕立て成功した故ジャコモ・ボローニャ氏に相談、結果通常はアルネイス種(白ブドウ)が植えられるランゲの畑にはシャルドネとソーヴェイニョン・ブランが植えられ、高級品種ネッビオーロを植えても十分な品質が期待できる畑にバルベーラを植えた。また、この地には極めて珍しいメルローまで植えられた。異端児ぶりは見事に発揮され、アメリカでは彼のことを「Crazy Gresy」と揶揄されていたらしい。
 そんな異端児も単一畑「マルティネンガ」だけは遊ぶことなく1797年から続く伝統を貫いている。畑からできるブドウそのままに、クリーンでエレガントなワインに仕上げるのがグレージ流フィロゾフィーだという。それ故かこの畑のバルバレスコは今でも「バルバレスコの評価基準」とも言われている。
 この日は今の季節の旬の食材をふんだんに使ったお料理に、マルケージ・ディ・グレージのワインを合わせていった。アレッサンドロ氏は箸使いも慣れた様子で春菊も松茸も銀杏も抵抗なく口に運んでいた。
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イケメン2代目のアレッサンドロ。銀杏もなんなくつかめる

最初に注がれたソーヴィニョン・ブランはステンレスタンクのみでの発酵熟成。
ランゲならではの優しい酸味とミネラル感はアルネイスにも通ずるところがあるが、ソーヴィニョン特有の青臭みは少なく出汁系にはとても合う。
赤ではバルベーラ・ダスティの振り幅の広さに驚いた。甘辛く煮付けたきのこや秋刀魚などの青魚もカバーするオールマイティーさを発揮した。
マルティネンガは淡白な和食よりも、もう少しワイルドなステーキやジビエに合わせるか、もしくはワイン単体でたのしんだほうが本領を発揮するかもしれない。
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マルケージ・ディ・グレージのワインと旬の食材をふんだんにあしらった宙山の料理

 来年にはアグリツーリズムも建設、2023年は「マルケージ・ディ・グレージ」としてマルティネンガで醸造を始めてから50周年である。異端児の父と、まだ30歳という今の時代を生きる息子のタッグ。次はなにをやってくれるのだろう?今から楽しみである。
(2017年10月2日取材)