信州たかやまワイナリーワインテイスティング

信州たかやまワイナリーワインテイスティング

 長野県の高山村に2016年に設立された「信州たかやまワイナリー」のプレス向けワインテイスティングが2月7日、銀座NAGANOで開かれた。

 高山村は南北に長い長野県の北東部、長野市からは東に20キロに位置する北信地区と呼ばれるエリアにある。国内でも有数の日照量を誇り、降水量が少なく、標高が高い場所にある畑は(400~830mの間に点在)寒暖の差も大きく、ワインぶどう用の栽培が適しているとして大手ワインメーカーが20年ほど前から注目していたエリアである。
実際、この村の契約農家で栽培されたシャルドネから造られたサントリーの「ジャパンプレミアムシリーズ高山村シャルドネ」やメルシャン「シャトーメルシャン北信シャルドネ」は国内外の数々のコンクールで金賞を獲得している。

 きっかけは、現たかやまワイナリー代表の涌井一秋氏が2006年に発足させた「高山村ワインぶどう研究会」。1996年にわずか3haの畑を3人で始めたワインぶどう用の畑はこのころは7haになっていた。2005年の日本ワインコンクールで「シャトーメルシャン北信シャルドネ2004」が金賞、2011年には長野では東御市に続くワイン特区を取得したのを追い風にワイナリー設立の話が持ち上がった。
 言わずもながだが、ワイナリー設立のためには資金がいる。農林水産省の6時産業ネットワーク(第3セクターの道)の交付も考えたが、最終的にはぶどう栽培者12名が株主、地元の酒販店、飲食店、旅館などからファンドを募り「株式会社 信州たかやまワイナリー」となった。
 500m2のワイナリーは2016年4月着工し8月に完成した。醸造免許は1ヶ月という異例の速さで取得、10月から醸造を開始した。なお、醸造責任者には、高山村に最初(1996年)にシャルドネを植えた時を知る元メルシャン、鷹野永一氏(現たかやまワイナリー取締役執行役員)が抜擢された。
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鷹野永一取締役執行役員醸造責任者(手前左)と涌井一秋代表

 エリア内6箇所、約50haの畑から造られるたかやまワイナリーのワインは、当初の3haから比べると格段に拡大したものの決して大きくはない。それゆえの生産本数の少なさからか、都心でのお披露目は今回が初めてということである。
テイスティングしたのは以下の通り

⭐ファミリーリザーブ Nacho 白
⭐ファミリーリザーブ Nacho ロゼ
⭐バラエタルシリーズ シャルドネ2016
⭐バラエタルシリーズ ソーヴィニョン・ブラン2016
⭐バラエタルシリーズ メルローカベルネ2016
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 ファミリーリザーブのNacho(ナッチョ)はスペイン語のような響きも感じるが、北信地方で「どう?」という呼びかけの意味の方言だそう。品種は”ミステリアス”な部分を残したい(醸造責任者鷹野氏談)とのことで非公開。税込み¥1620と比較的手頃な価格ではあるが、生産本数の少なさ(白2000本、ロゼ3500本)と、高山村及びワイナリー限定での販売ということで入手は困難。
 バラエタルシリーズは2002年生まれの人気アーティスト、Mayca(メイカ)さんデザインのエチケットを起用。十八番のシャルドネはステンレスでの発酵・熟成のほか、バリックでの発酵・熟成が30%。ソーヴィニョン・ブランは比較的標高の高い畑(630~830m)のぶどうでステンレス発酵のみ。2月10日より順次リリースされるメルローカベルネは新樽率100%で熟成、このほかにカベルネ・フランが1%未満(40kg)ブレンドされている。価格・生産本数はいずれも税込み¥2970・4000本。
このほかに最高レンジのプレミアムシリーズもリリース予定だが、このシリーズは全ての条件が揃った良年にしか造らない。現在のところはぶどうの樹齢が若いことなども手伝ってまだ世には出ていない。

 醸造について常に心がけているのは(1)バランス:味わいや香りがどれも突出することはなく調和していること。食事とのバランス(マリアージュ)も鑑みてアルコール度数を上げすぎないこと。(2)クリーン:畑・ワイナリー双方において衛生環境に気を配る。(3)自然な流れ:無理にぶどうのポテンシャルを上げるような凝った醸造テクニックを使わないことだと鷹野氏は話す。
 くどいようだがこの少ない生産本数ゆえなかなか出会い辛いワインであるが、見つけた際にはこの氏や高山村の心意気をぜひ飲んで確認してみてほしいと思う。

 余談だが、このワインテイスティングの後ランチが振る舞われた。地元の人気店「文の蔵」の蕎麦を始め、生ハム、チーズ、リンゴは全て高山村産の食材である。こうした農作物には恵まれた環境ではあるが、人と自然に優しい資源の循環や減農薬栽培など、さらなる環境保全に村をあげて推進している。
加えてジビエ(鹿とイノシシ)のソーセージも県内で捕獲・加工したものであった。
一体この地の自給自足率はどのくらいなんだろう?近隣のテーブルからこんな声も漏れ聞こえてくるほどのこの豊かさが羨ましい。(2018年2月7日取材)
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